「東大・京大生のバイブル」外山滋比古博士の「思考の整理学」 自分の頭で考える重要性

■東京大学、京都大学の生協で、2008年から2年連続「最も売れた本」になった
 
■東京大学、京都大学で2015年の文庫本ランキングで2位
 
■1983年に出版され、2009年に100万部突破、2016年11月時点で111刷、累計211万部

 
 
・・・という本をご存知でしょうか?
 

「東大・京大生のバイブル」とでも呼べそうなこの本は、「思考の整理学」外山滋比古著です。
 
「思考の整理学」外山滋比古
shikounoseirigaku
 
この本は、出版当初から注目されていたわけではありません。
 
世に知られるようになったきっかけは07年、岩手県盛岡市にある「さわや書店」で、店員の松本大介さんによるPOPでした。

”もっと若い時に読んでいれば・・・”そう思わずにはいられませんでした。
 
何かを産み出すことに近道はありませんが、最短距離を行く指針となり得る本です。

これがきっかけとなり本の認知が広がり、同店での売り上げが爆発的に増加しました。
 
同様の宣伝が全国的に行われると瞬く間にベストセラーになり、冒頭で紹介したように09年には100万部を突破します。
 
 
出版されたのは30年前にもかかわらず、なぜこれほど売れ続けるのでしょうか?同書の担当編集者・ちくま文庫編集長の伊藤大五郎氏はこう分析します。

30年以上前の本ですが、内容が普遍的で古くならないことがロングセラーの最大の要因です。
 
”知識を詰め込むだけでは、考える力は養われない”という外山先生のメッセージが、知識偏重型の勉強をしてきた東大や京大の学生に伝わっていると感じます。

優秀な学生たちをひきつけてやまない、同書のメッセージは何かというと、
 
自分の頭で考えること
 
ではないでしょうか。
 
外山氏は、人間のタイプを「グライダー型」と「飛行機型」の二つに分けています。
どういうことかというと・・・

グライダー型
他人に引っ張られて飛ぶ。自力で飛び上がることができない。
教師など他人から知識を詰め込まれるばかりで、自分の頭で考えることを疎かにしている人。
 
 
飛行機型
自分で飛べるエンジンを備えている。
自分の頭で考えられるので、自力で目標まで到達できる。

外山氏は、これまでの日本の教育は知識を詰め込むだけで、「グライダー型」ばかりを産み出してきた、と主張しています。

僕が本に書いたのは、”墜落してもいいから飛行機になれ”ということです。
 
グライダー型人間はモノマネが得意だけれど、新しい事態や時代の変化には対応できません。しかも現在は30年前よりはるかに時代が進み、学校で学んだ知識がより通用しなくなった。
 
人工知能(AI)やITなどが発達した今こそ、他人に引っ張ってもらって飛ぶグライダー型人間ではなく、自力で自分のめざす場所まで飛べる飛行機型人間が求められています。

自分の頭で考えるのに、知識や記憶力は必要ない、と外山氏は指摘しています。
 

 
松下幸之助や本田宗一郎は下手な知識がなく、何事も自分の頭で考えたから成功した、と考えているのです。

日本の教育は知識を詰め込み、忘れないことを求めるけど、それは大間違いです。
 
知識や記憶が豊富だとつい頼ってしまい、自分の頭で考えることが少なくなります。
 
知識や記憶があるがゆえ、それにとらわれてしまい、自分で飛ぶことができなくなるんです。

現在のような情報過多な時代には、むしろ「忘れる力」を発揮して、思考を整理することが大事だとも。

不必要な情報が脳を占拠していれば、自力で考える妨げになります。
 
余計なことはどんどん忘れて頭をすっきりさせれば、思わぬアイデアが浮かぶものです。
 
「忘れる力」は、コンピューターにはなく、人間だけが持つ大切な能力です。忘れることで脳の新陳代謝をはかる必要があります。

思考を整理するには、声を出すことが有効で、外山氏は積極的な「おしゃべり」を勧めています。

沈思黙考していても袋小路に入り込むばかりです。時には声を出すことも大切です。
 
その時は、同業者同士ではなく、理系と文系、販売と庶務など、畑違いの人と話をしましょう。
 
自分が知らない分野のことを聞けば脳が刺激されて思わぬ化学反応が起き、新しい発想が浮かぶかもしれません。
 
おしゃべりに必要なのは「調和」ではなく「混乱」なのです。

「思考の整理学」は、学生だけでなく多くの有識者にも愛読されています。
 
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このコンテンツは雑誌週刊ポスト120~122ページを参考にしました。
 

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