前ページからの続きです。
このページでは、子育てにおける父親の役割に関する澤口さんの主張を紹介します。
阿川 以前、『叱られる力』という本を書いたんですが、子供のときから褒めて育てられてばっかりで、叱られ慣れてない人が増えてるんですよ。喜怒哀楽の喜と楽にしか接させないでいると子供が脆弱になるんじゃないかと思うんですが。
澤口 正鵠を射ております。脳機能というのはどれも必要だから持っているんです。それは使わなければ発達しませんから、当然、怒と哀も経験させたほうがいい。落ち込みすぎるのはまずいですが、色んな挫折をしたほうがあとあと脳によい影響があることは脳科学では常識です。
欧米でもようやく最近になって褒めるだけの教育はやめましょうとなりましたが、日本は教育に関してさらに遅れています。
阿川 私の時代に比べたら、お父さんも育児に協力的になってるはずなのに、なんなんでしょうね。
澤口 あ、申し添えておきますと、六歳くらいまではお父さんは育児に必要ありません。
阿川 ええっ!どういうこと?
澤口 間接的にお母さんをサポートすればいいんです。お父さんが育児に参加した方が良いという研究もあれば、いや必要ない、という両方の研究があるんですが、論文を分析すると、育児の方法をきちんと学んだお父さんが子育てに参加するのはプラスですが、そうでない場合はかえってお子さんの脳の発達が阻害されるという結論ですね。
もっとも、六歳以降になると今度はお父さんが重要になってきますが。
阿川 それはどうしてですか?
澤口 それは子供の脳が変わってくるからです。六歳以降、ついで、思春期には父親が権威にならないといけない。そうじゃない場合、娘さんの魅力を下げるというデータもあります。
阿川 美人に生まれても?
澤口 顔ではなく、行動で魅力性が下がるんですよ。身のこなしとか。
阿川 へえ~。父親が権威になるためには何をすればいいんですか。
澤口 一緒に山を登ったり、キャンプするのがいいですね。あとはキャッチボールを週に一回やる。運動神経の悪いお父さんでもさすがに七歳の子よりは速く強い球を投げられるでしょうし。
お父さんはすごいんだと示せることをこの時期にやっておけば、子供はお父さんの言うことをちゃんと聞く。
阿川 その間、お母さんは?
澤口子供が二十歳以降になればまたお母さんのほうに戻ってきます。逆にお父さんは娘さんがある程度育ってきたら嫌われますし、むしろ嫌われないとまずい。
現代の家庭では何かと軽視されがちな父親の役割ですが、父親にしかできないことがあるとわかります。
管理人個人的には、現代ではもう少し「父性」要素が強くなっても良いのではないかと考えています。
このコンテンツは雑誌「週刊文春」2015年12月17日号123~124ページを参考にしました。