前のページでは、スマホやゲーム、テレビが脳の前頭葉の活動を低下させる、という川島隆太所長の研究を紹介しました。
しかし、川島所長自身が「脳トレ」ゲームを開発されています。
脳トレとはいえ、ゲームには違いありません。トレーニングのつもりが、前頭葉の活動が弱くなる、なんてことないのでしょうか?
「楽しさ」を無くすとトレーニングに
結論から書きますと、当然のことですが「脳トレ」ゲームで前頭葉の活動が落ちることはありません。
トレーニングにより、前頭葉を活性化するために開発されたソフトなので、当たり前ですが。
実を言うと、「ゲームで脳活動低下」は開発段階で問題になっています。
こんな話があります。
「前頭葉トレーニングで脳活動を高める」を目的に「脳トレ」は開発が始められました。
しかし製作途中段階でソフトを使ってみたところ、何と脳の活動量は低下してしまったのです。これはいわば”順当”な結果です。
対して、紙と鉛筆で何か作業をさせると、活動量は必ず増加しました。それでは、とDSやゲーム機で同じ作業をするのですが、やはり脳の活動は低下してしまうのだそうです。
そこで川島所長と任天堂は、脳活動を下げないためにはどうすればよいか、試行錯誤を重ねます。
そして出た結論は「楽しさを無くす」でした。
多彩なビジュアルや楽しげな音楽をそぎ落とすほど、脳の活動が高くなるのです。
こうした事実から、川島所長は
楽しさのようなものが脳活動の抑制原因ではないか
と考えています。
そのうえで、このように主張されています。
そう考えると、楽しく勉強するとか、ゲーム感覚でアプリなんかを使って勉強するなどという商品がいろいろ出ていますけれど、私は否定的です。
「脳トレ」のように、前頭葉に抑制をかけないよう工夫されたソフトやアプリであれば、脳が良いほうに発達します。
ゲームやアプリが一概にNGとは言えず、適切に見極める必要があるのです。
”ITづくしの教育”はダメながらも功罪あり
数年前に、韓国でIT教育に関する調査が行われました。
モデル校を作り、その学校では電子黒板、電子教科書などを使い、教育の全てを電子媒体で行ったのです。その結果、この極端なIT化は失敗と評価されました。子供たちの興味や関心は高まるのですが、知識が定着しないのです。
「IT化はダメ」という結論で落ち着いてしまいそうですが、電子機器が持つ「子供の興味をひく力」が極めて強いのは事実です。
スマホやタブレットに興味を示さない子供はいない、といっても過言ではないでしょう。これはIT機器が持つ強みでもあるのです。
川島所長はこのへんのバランスについて、このように主張されています。
もう一つ考えなきゃいけないのが、実際に子供が興味関心を示さないと、勉強しないということです。
そもそもそのせいで授業が成立しないのであれば、必要悪であったとしても、そういった類のITを入れて興味を一旦引きつけるという選択肢を否定はしていません
電子機器で興味をひいておいて、紙媒体での学習も徐々に増やして知識の定着を確かなものにする、といったやり方なら最強なのかもしれませんね。