4人の子供を東大理三に進学させた佐藤亮子さんの子育てのモットーは、
・大人になって高校までの18年間を振り返った時に「楽しかったな」と思えること
です。
そのためには、家庭を温かく安心できる場にするのはもちろん、学校も楽しい場でなくてはいけません。希望する進路を選べることも楽しさを生みます。
(このコンテンツはプレジデント Family2017年秋号46~51ページを参考にしています)
佐藤亮子さん 勉強の方針と工夫
そこで佐藤さんは、勉強も楽しくできるよう工夫をこらします。
例えば国語の四字熟語を覚えるために、退屈な単なる暗記ではなく、新聞のスポーツ欄などで探すようにしました。
四字熟語を見つけたら、「出てる出てる!」と大げさに言うと子供たちが集まってきて、実社会で熟語がどのように使われているかを面白く学ぶわけです。
また佐藤さんは、国語の難しい文章は声色を使い分けて音読してあげたりもしました。紙芝居のように聞けるので、子供が面白がって興味を持ちます。
問題集をコピーしてノートに貼ってあげたり、プリントを整理したりといった手伝いをすることはありましたが、塾の方針があるので勉強は教えませんでした。
塾の問題を家でやるときも”一緒の場所にいてあげる”という感じです。
子供さんが問題を解く際は、「5分考えてわからなければ答えを見ろ」と教えていました。それにより、数多く問題を解くわけです。
塾の宿題が多かったので、それをこなすためにはスピードを上げる必要もありました。
リビングでの学習 理由と効果
佐藤家の勉強場所は、大学に入るまではずっとリビングでした。
というより、リビングが勉強部屋だった、のほうが正確です。リビングに学習塾を四つ並べて、そのそばにこたつを置いていました。
例えば二階に勉強部屋を作ると、ドアを閉められたら子供がその間に何をしているかわかりません。
佐藤さんは「子供が18歳になるまでは責任を持って面倒をみる」と考えていたので、リビングに勉強机を置くことにしたのです。
くつろぐためのスペースに勉強のための空間があるので、勉強に対する心のハードルも低くなります。「勉強するぞ!」などと固くならず、「なんとなく勉強する」環境になるのです。
最初はこたつでゴロゴロしながら勉強していると、腰が痛くなってきて途中から机に移動して勉強を続ける、といったこともよくありました。
子供4人がこたつで勉強するので、とにかく窮屈で、しかも勉強している隣でバイオリンやピアノを弾く子もいて、けっこううるさい”勉強部屋”でしたが、それでもみんな平気で勉強を続けていました。
小学校時代の勉強で大事なこと
佐藤さんが考える、小学校時代の勉強で大事なことは、勉強の積み残しをしないことです。
小学1年生で習う漢字や計算は、1年生のうちに完結させる。以後も、その学年での学習はその学年のうちに修得することです。
これを次の学年に持ち越すと負担がどんどん増えて大変になってきます。佐藤さんの場合、読み書き、計算はただやればよいというのではなく、きっちりと丁寧にやらないと役に立たないよ、と注意してきました。
佐藤さんは小学生での国語の重要性も強調しています。これは理数系(志望)でも同様です。
数学者の藤原正彦さんは「数学は情がないと解けない」としていて、理数系であっても国語をきちんと学び、母国語でいかに深く考えられるかは非常に大切なのです。
佐藤さんの場合、子供には本を読みなさいといつも言っており、読んでほしい本のリストを作って渡したこともあります。しかし佐藤さんいわく「子供たちはあまり読まない」。
そこで佐藤さんは、国語の試験問題を利用して、小説や論述問題を親子で話し合う、といったことをしました。
国語の試験問題はその作品の大事な部分が抽出されていて、「なぜですか」と問題にされているので、ポイントの理解に役立つのです。
試験の出典を佐藤さんが一冊読んで、子供たちに続きの展開を伝えてあげたこともあります。「実はこの続きはね・・・」といった話には、子供たちは結構興味を持つのだそうです。
テレビゲームのルールは
佐藤家では、ゲームは中学生になるまでは一切やらないのがルールです。
一度だけ、長男さんが小4のときにゲームボーイアドバンスを買ってあげたことがあり、一つのゲームを4人で交替で遊んだ時がありました。
しかし画面が小さいため、目が悪くなりそうだと1日で取り上げてしまったそうです。
それからは「中学生からゲームOK」のルールになり、一人ずつゲームを持つことに。
ただし、家でのゲームは禁止されていました。まだ中学生になっていない子がゲームをしたがって収拾がつかなくなるからです。
それではどこでやるのかというと、中学校へ向かう電車の中。佐藤さんの家から灘中学までは1時間40分もかかるので、その時間だけゲームをするのです。
見るテレビは
佐藤家では、子供が小さい間はテレビを見る習慣はありませんでしたが、中学生になってからはバラエティー番組を見るようになりました。関西に住んでいるので、お笑い番組が好みなのです。
なんと次男さんは高2の時に、亮子さんに内緒でM-1グランプリの関西予選に出場していました。友達の家に泊まり込んで練習していたのです。
その年は残念ながら落選し、翌年もまた応募する気でいたら、M-1グランプリが中止になってしまいました。
次男さんは「もしあの年もM-1があったら俺は東大に落ちてた(笑)」と言っているそうです。
子供にどんな声をかけるか
亮子さんは、信頼関係がない限り、子供が親の言うことを素直に聞くはずがないと考えています。
テストの点数が悪かったときに、「この点数はなに?」や「こんな点数じゃ学校に行けないよ」などと言ってしまう親は多いのではないでしょうか。
もしもその点数をとってきたのが隣のお子さんだったら、同じことをその子に言えるでしょうか?
まず言えないでしょう。
佐藤さんは「隣のお子さんに言えないことは自分の子供にも言ってはいけない。言葉を選ぶことは大事です」としています。
子供に「勉強しなさい」と言えば、お母さんの気持ちは治まるかもしれませんが、それは親の自己満足にすぎません。言われた子供は不愉快なだけです。
そんな時佐藤さんは、「今から30分だけプリントを3枚やろう」と具体的な数字で示していました。
もしも親が約束したことを変えるとしたら、どうして変えるのか、その理由を説明しなくてはいけません。自分の子供だからといって、約束をないがしろにしては絶対にダメです。
佐藤さんは
「子供は見限るのが早い。99まで気を遣って言葉をかけていても、最後の一つで否定するようなことを言ったら、それまでの99の言葉は吹き飛びます」
と語っています。子供を尊重して、小さなことでも言葉を選ぶのは大切なのです。